怪談本のレビュー企画、今回は下駄華緒さんの「怪談忌中録 煙仏(けむりぼとけ)」をレビューしていきます。
「怪談忌中録 煙仏」レビュー
タイトル | 怪談忌中録 煙仏 |
著者 | 下駄華緖 |
出版元 | 竹書房 |
発売日 | 2020/12/28 |
話数 | 37話(224ページ) |
Amazon評価 | 4.2 |
2018年、バンド「ぼくたちのいるところ。」のベーシストとしてユニバーサルミュージックよりデビュー。前職の火葬場職員や葬儀屋の経験を生かし、怪談師としても全国を駆け回る。怪談最恐戦2019の優勝者でもある。
怪談は一話ごとに評価をしていきますが、基本的な評価基準は以下です。
収録されている怪談と一話ごとの評価は以下ですが、ジャンルは人によって「不思議な話」と感じる方もいれば「怖い話」と感じる方もいると思うので、あくまでも参考程度に捉えてください。
タイトル | ジャンル | 評価 | |
---|---|---|---|
#1 | しりとり | 怖い | 3.5 |
#2 | ジャリ…… | 不思議 | 3.0 |
#3 | 腐敗臭 | 不思議 | 3.0 |
#4 | ネズミのおっちゃん | 怖い | 3.0 |
#5 | 煙仏 | 不思議 | 3.5 |
#6 | 見える人 | 怖い | 3.0 |
#7 | 仲良しの理由 | 怖い | 3.5 |
#8 | 大学の裏山 | 怖い | 3.0 |
#9 | 乗っ取り | 怖い | 3.0 |
#10 | 遺骨整理 | 怖い | 3.5 |
#11 | 中にいる | 怖い | 3.5 |
#12 | 軽いのは | 怖い | 3.0 |
#13 | 深夜の病院で | 不思議 | 3.0 |
#14 | 金縛り | 怖い | 3.5 |
#15 | 警告 | 怖い | 3.0 |
#16 | ついてくる | 不思議 | 3.0 |
#17 | 目の前にいたのは? | 怖い | 3.5 |
#18 | 火葬場職員 | 怖い | 3.0 |
#19 | 赤い女 | 怖い | 3.5 |
#20 | 心霊写真の効力 | 怖い | 3.0 |
#21 | 沖縄旅行 | 怖い | 3.5 |
#22 | 飛び降りた女性 | 不思議 | 3.0 |
#23 | わかる力 | イイ話 | 3.0 |
#24 | 首吊り現場 | 不思議 | 3.0 |
#25 | 忘れ物 | 怖い | 3.0 |
#26 | 願い事 | 不思議 | 3.5 |
#27 | 神様からのお釣り | 不思議 | 3.5 |
#28 | 借りたゲーム | 不思議 | 3.0 |
#29 | ロックオン | 不思議 | 3.0 |
#30 | しきたり | 不思議 | 3.5 |
#31 | とある旅館 | 浪漫 | 4.0 |
#32 | 時代を超えて | イイ話 | 4.0 |
#33 | 返せ | 不思議 | 3.0 |
#34 | 引き取り待ち | イイ話 | 3.5 |
#35 | 友引人形 | 不思議 | 3.0 |
#36 | 防犯カメラ | 怖い | 3.0 |
#37 | 最後の伝言 | 不思議 | 3.0 |
誤字・誤用
おそらく誤字や誤用と思われる箇所です。
- 88ページ4行目
-
誤:家に着くまであとに二十分ほどかなと、田舎道を走っていた。
正:家に着くまでにあと二十分ほどかなと、田舎道を走っていた。
- 103ページ11行目
-
誤:まさしく水袋という表現は的を得ていました。
正:まさしく水袋という表現は的を射ていました。
ピックアップ
ここでは印象的だった怪談をいくつかピックアップして、簡単にあらすじを紹介します。
とある旅館
当時大学生だったKさんは、夏休みに大勢の友人たちととある島にある古い旅館に合宿で泊まることになった。
その旅館で不自然な謎の扉を見つけ、好奇心から恐る恐る扉を開けてみると、そこには壁一面ビッシリと大量の御札が貼られた狭い通路と階段を発見する。
そして先輩が一人で階段を登り奥に何があるのか確認しに行ったはずなのに、階段の奥には何があったのか聞いても覚えていないという。
この話に興味を持った著者の下駄さんと、友人でオカルトコレクターの田中俊之さんは二人で、この旅館へ調査に向かい体験者から聞いた謎の扉と階段を発見し、二人は恐る恐る階段を登っていく。
はたして謎の階段の奥には一体何があったのか…。
時代を超えて
当時小学生だったHさんは、毎年夏休みと冬休みになると両親に連れられ田舎のお祖母ちゃんの家に行っていた。
お祖母ちゃんはいつもおこづかいをくれたり、どんなワガママも聞いてくれるので、Hさんはお祖母ちゃんのことが大好きだったが、Hさんが10歳の時にお祖母ちゃんが亡くなってしまう。
お葬式の前日、寝ずの番として父とHさんは葬儀会館の棺がある部屋で過ごすことになったのだが、知らない間に眠っていたようで、夜中に父のイビキで目が覚めてしまう。
そしてふと棺に目をやると、そこには茶色い赤ん坊のようなものが棺の中に入ろうとしているのを見てしまう。
この茶色い赤ちゃんのようなものの正体とは?
後日、家族の誰も知らなかったことが判明する。
まとめ
がお的総合評価 | 3.5 |
今作は下駄さんの怪談本デビュー作で、普段なかなか知ることのできない火葬場で起きた怖い体験や裏側での出来事を中心に、短めの怪談が37話収録されている他、それとは別に火葬場職員の体験談として「人が焼けるとどんなにおいがするのか?」など豆知識的なエピソードも8話収録されています。
一部で誤字や誤用らしき文章を見つけたのですが、竹書房では推敲や校閲はせずに、著者の原稿をそのまま載せているのかな?とちょっと気になりました。
とは言いつつも、ただ怖い話だけでなく、火葬場という普段あまり行くことのない場所での不思議体験を多数読むことができたので、個人的には満足度の高い本でした。
レビュー済みの怪談本は以下でまとめています。

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