怪談本のレビュー企画、今回は夜馬裕さんの「厭談 戒ノ怪(えんだん いましめのかい)」をレビューします。
「厭談 戒ノ怪」レビュー

タイトル | 厭談 戒ノ怪 |
著者 | 夜馬裕 |
出版元 | 竹書房 |
発売日 | 2021/12/27 |
話数 | 18話(223ページ) |
Amazon評価 | 4.9 |
相方のインディと怪談師コンビ「ゴールデン街ホラーズ」を結成。カクヨム異聞選集コンテスト大賞。第7回幽怪談実話コンテスト優秀賞。怪談最恐戦2020優勝。話数の豊富さと、練られた構成の怪談には定評がある。
怪談は一話ごとに評価をしていきますが、基本的な評価基準は以下です。
収録されている怪談と一話ごとの評価は以下ですが、ジャンルは人によって「不思議な話」と感じる方もいれば「怖い話」と感じる方もいると思うので、あくまでも参考程度に捉えてください。
タイトル | ジャンル | 評価 | |
---|---|---|---|
#1 | 特別室 | 怖い | 3.5 |
#2 | お籠めさま | 興味深い | 4.0 |
#3 | お絵描き | 怖い | 3.5 |
#4 | ゆれる影 | 怖い | 4.0 |
#5 | まごころの椅子 | 不思議 | 3.5 |
#6 | 事故現場 | 不思議 | 3.5 |
#7 | 逃げ回る男 | 怖い | 3.5 |
#8 | しもべより | 怖い | 3.5 |
#9 | さらわれた女 | 不思議 | 3.5 |
#10 | すねこすり | 不思議 | 3.5 |
#11 | 墳墓の丘 | 奇妙 | 4.0 |
#12 | 一番の親友 | 切ない | 3.0 |
#13 | 愛犬 | 怖い | 4.0 |
#14 | 子どもをよろしく | 怖い | 3.5 |
#15 | 隣人奇譚 | 不気味 | 4.0 |
#16 | ダメかもしれない | 怖い | 3.0 |
#17 | お嫁さん儀式 | 怖い | 4.5 |
#18 | 交差点 | 奇妙 | 3.5 |
ピックアップ
ここでは印象的だった怪談をピックアップして、簡単にあらすじを紹介します。
お籠めさま
今から二十年ほど前、仁志さんが三十代前半の頃、母方の伯母が病死した。生涯独身を貫いた人で、配偶者や子供もいない。
妹にあたる仁志さんの母親は早くに亡くなっているため、伯母が長年暮らした日本家屋の一軒家は、甥である仁志さんが相続することになった。
とはいえ、伯母の家は北関東の山間部にあり、東京で働く仁志さんには不便過ぎて住むことができない。売却も考えたが、かなりの田舎なので、土地まで含めても二束三文にしかならないことを知ると、手先が器用でDIYの得意な仁志さんは、この家を自分の手でリフォームして、休日に訪れる別荘へ改築しようと考えた。
平日は東京で働いて、金曜の夜になると車を走らせ伯母の家へ行き、土日の二日間かけて、徐々に家の中を作り替える。伯母が数十年にわたり使い古した状態なので、綺麗に整えるには時間を費やしたが、そんな生活を半年間も続けるうちに、ようやく最後のひと部屋までリフォームが進んだ。
残すは、伯母が寝室にしていた奥の間のみだが、作業に取り掛かろうと天井から吊るされた掛け軸を外すと、後ろから予想もしていなかったものが現れた…。
まとめ
がお的総合評価 | 4.5 |
今作は夜馬裕さんの2冊目の単著で、長編3割・短編1割・残り8割といった構成になっており、個人的には「お籠めさま」「ゆれる影」「墳墓の丘」「愛犬」「隣人奇譚」「お嫁さん儀式」が読み応えがあり非常に良かったです。
一見すると、収録されている18話はそれぞれが独立した怪談ですが、読み進めていくと裏で繋がっている話がいくつもあり、本を読み終えたあとまた最初から読み直したくなりました。
ちなみに今作には、夜馬裕さんの友人が失踪した話が2話収録されており、「墳墓の丘」は高校時代の友人が失踪した話で、「隣人奇譚」は大学時代の友人が失踪した話です。
前作に続き今作も非常に素晴らしい怪談本でした。
レビュー済みの怪談本は以下でまとめています。

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